今日「読み」終ったものです。
●「The New Paradigm for Financial Markets: The Credit Crisis of 2008 and What It Means」(オーディオブック) George Soros ★★
ヘッジファンドの代名詞、あとはハンガリー系ユダヤ人としても世界的に知られているジョージ・ソロスの最新作です。以前ブッシュ再選を拒む活動の一環で大学院に講演に来ていたので実際見たことがあり、このときは彼のその当時だしたばかりの本、The Bubble of American Supremacyの宣伝もかねてきていたと思います。講演のあとこの本を読んだ記憶があるのですがこの作品では、彼の行っているOpen Society Instituteなどを通しての主に(彼の出身国を含む)東ヨーロッパなどの旧ソ連の民主化運動のサポート、たとえば「コピー機」という、我々のように西側世界の影響を多分に受けた者には特になんの変哲もない機械が、情報の公開・流通・伝播という次元で非常に大きなインパクトを生み出す機械でもあり、コピー機の寄付という地道な行為を通して、旧ソ連(およびその他の圧政下におかれていた)の国々において非常に大きく反政府の動きを広めるのに寄与した、というような彼の行動哲学について言及していたことを覚えています。
んでこの本ですが、結論的にいうと、これはこのような彼の哲学についてまとめた作品であり、2008年、そして今まさに続いている世界金融・経済恐慌についてこと細かく書かれてある、ということではありませんでした。なのであまりヒットではありませんでした。彼のいう、Reflexibityという概念(再帰性、と日本語では言うらしいです。市場参加者による先入観、バイアス、期待、予想、心理などが実際の市場に交互に影響をし合っており、仮定の上に仮定を塗りたくったような経済学では金融市場の現実を説明することは不可能、とする彼の、市場と参加者の相関関係の考え方)、そしてナチス時代を生き延びた教訓を元に育てられたこの哲学が淡々と紹介されていた作品でした。
ですが、彼のような世界で有数の資産家、事業家、慈善家がどのような考えで世界を見ているのかがすこし垣間見えて、その点では面白かったです。世界レベルのヘッジファンドを運営して世界をみる、というのは、一つの株価が下がる上がるのレベルではもちろんなく、(市場だけではなく)国全体を、経済、金融のみならず、政治、文化、歴史からも基づいて判断していかなくてはいけないものである、ということが結構伝わってきました。
ナチス時代、共産時代と、人々の恐怖とそれに大部分を支えられた希望が原動力、行動背景となった世界で青年期までを過ごし、「個」と「全体」が相互に及ぼす影響力を実感してきたからこそ、原則・ルールのある(と思われた)金融市場システムとその参加者との再帰性が彼には始めからみえていたのかもしれないと思いました。「個」と「全体」との相互の影響を通して台頭した全体主義の動きと、人工化、そして肥大化した世界の金融市場の動きとに共通の要素があったのでは、と思った次第です。
・・・ですが、実際の今回の恐慌について詳しく載っていなかったのでAmazonで結構評判が良いThe Ascent of Moneyをオーディオブックにて購入しました。いい本だといいのですが・・・。
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