最近の乱読です:
●「Hidden Truth, Forbidden Knowledge」 Steven M. Greer ★★★★
これねぇ、泣く子も黙るトンデモ本で、なんてったって邦訳のタイトルがずばり「UFOテクノロジー隠蔽工作」なんであります。これはいつ買ったのかちょっと忘れていたのですが、Amazon.comから購入してああ、こういうトンデモ本もあったなぁ、と思い出してページをめくりだしたのですが・・・。これはね、止まりませんでしたね。週末2日で没頭して読みふけって読み終わりました。これは単なる「トンデモ本」という範疇を超えているように思います。
もちろん人類がまだ手にしていない(と思われている)種々のテクノロジー(反重力、タイムトリップ、テレキネシス、テレポーテーション、フリーエネルギーなどなど)が実は50年代からもうアメリカで発明が始まっており、かの有名なロズウェル事件を境目として、飛躍的にそれらの技術開発が秘密裏に進められてきた、そしてこれらの技術はもう完成しており、しかもいわゆるグレイとかの宇宙人(ともくされている存在)も、(その「宇宙人」を介した)オブダクション、キャトルミューティレーション、などもこの(テクノロジーを握る)秘密政府の仕業であり、そして彼らの目的は宇宙人=恐怖、という図を植えつけ、地球全体を宇宙と敵対させる計画を進めている(!)・・・という、トンデモ本が好きな私でさえ正直「は?」というレベルのものであったことは確かです。
しかしこの本の作者のグリア博士が中心となり、かなり高名そして上層部にいるアメリカ軍関係者や、元政府高官などがこのような壮大な「秘密」を公開するという、まったくもってまじめな「ディスクロージャープロジェクト」(日本語のとあるサイトでさらっと読むとそのトンデモさがわかります)という公の試みも存在し、これが単なる「トンデモ本」ではもしかして終らない可能性があるのか?と思わせてくれるような、ちょっと怖い内容の本でありました。
こういう本はまぁほとんどの(オカルト、UFOとかのマニア以外は)人は興味を示さないかも知れませんが、この作者の霊的、哲学的な主張は驚くほど他のまっとうな(?)精神世界本の主張と共通するところがあり、霊性を高める、「悟り」を開く、チャクラを開く、などの一種の通過点が実は本当に高度な物理的な技術のベースとなっている、ということが非常に鮮明に見えたような気がしました。
邦訳がどういう質なのかは皆目見当付きませんし、このようなUFO・宇宙人関連の話は「ザ・眉唾もの」というレッテルが貼られており、役に立たないトリビア&トンデモ知識のみに特に興味のある人(例えば私)以外にはかなり、というかほぼ不可能に近いくらいに怪しい本です。なのでそういう人たちにはこんな本は一瞥の価値もないかもしれませんが、この所謂「怪しい」関係の知識に少しでも興味のある人は、これ、お勧めです。おもろいし、ホントだとしたらかなり衝撃的です。ホントか嘘かは与(あずか)り知りませんが、こんな知識も世の中には存在しているんだとホントに感心。
●「絶対貧困」 石井光太 ★★★★
これもヒット。例の有名な「物乞う仏陀」の作者の最新作です。これは「貧困=かわいそう=悪だ」の自動変換思考、もしくは「平和に反対するのか」論に代表される巷の開発論ではなく、生身の、等身大の「絶対貧困」層であるスラムの社会構成、日々の生活を淡々と説明した本です。
この「物乞う仏陀」は読む機会がなかったのでこの作品を機に彼の本をまたぜひ読みたいと思いました。これは完全な個人の性格の話ですが、私はなんでも事件性のある出来事を見聞きしたときにはまず、なぜなのか、という問いを始めにする性格です。なので目の前の「正義」を目指してすぐに突進するという性格ではありません(だから悪い、良い、という次元ではなく、私個人の思考・行動傾向です)。なので以前にも書いた松本仁一氏の本といいこの石井氏の本といい、私の好きなアプローチが取られているので非常に参考、そしていい本だとおもいました。
●「The Tipping Point」 Malcolm Gladwell ★★★
(邦訳はこちら)これはオーディオブックで読みました。前回のOutliersに続いてのGladwell氏の本で、同じく視点が非常に面白いです。これは一言で言うとEpidemiology、つまり影響(プラスであれマイナスであれ)が指数関数的に増えていく現象の傾向と分析、そして原因を探る疫病学のような考えを現代の社会現象に当てはめたものです。
ここで扱われている社会現象とは例えば靴のブランド、「ハッシュパピー」の突然の人気、NYの犯罪率の突然の下落(でもこれはFreakonomicsにおいては単純に80年代(だったと思う)アメリカにおける中絶に関して肯定的な法律の成立によるものだ、という説もありますが)、「セサミストリート」の大成功、などなど、いかに小さい事が大きな変化を生み出していったのかが説明されてた本です。
もちろんこの作者のアングル、ものの見方が非常に面白いのですが、もちろん例えば(ユニークなアングルの傑作でいえば)「銃・病原菌・鉄」がありますが、これも「じゃ科学的(統計的に)立証してみろ」、といわれてもそれはこれらの本では出来ていないので、このように立証・確証がないのには耐えられない人には向いてない本だとおもいます。
でもこの本からは、表面化している、そして我々の思考フィールドに飛び込んでくる「核」と思われている事象が、実はそれを取り囲む種々の要素(考え方、文化、生活など)こそが本当の「犯人・核」であり、この表面化している事象が得てして(それを取り囲む、運ぶだけの)「ベクター」のような存在でしかない、という、主客の逆転、もしくは老子でいう、車輪そのものではなく、車輪の真ん中の空間こそが重要なのである、という無用の用のような道教、陰陽、そして二元論に通じる、かなり深遠なトピックであると感じた次第です。
あとは思考の現実化、という要素も十分にこの本からいろんなケースを見ることが出来、それもひきよせの法則からみてもきちんと合致していることがわかるような内容となっています。てなわけでこの本も結構おもしろかったです。
●「壊れゆく地球 気候変動がもたらす崩壊の連鎖」 スティーヴン・ファリス 藤田 真利子訳 ★★
気候変動系の本で訳本です。訳の質はかなり悪かったです。が、このような気候変動の論議に良くあるような、なにからなにまで気候変動のせいに見せようとするような論理の飛躍がだいぶ気にかかりました(取り上げられている章のほぼ半分以上がそれでした)が、それでもまぁこの本が伝えようとしている、現地レベルでの気候変動の影響、という目では一読には値すると思います。
●「断る力」 勝間 和代 ★
日本に帰ったときにぱっとみて気になったので購入したのですが・・・。また後悔。アマゾンの読者批評にもありますが、なんか彼女の文章って人間味が私には全然感じられませんねぇ。特にこの本の文章は非常に雑で、本当にパソコンで打った、印刷した、というレベルの文章。具材はまぁあるんだけどダシが全然ないスープ、そんな感想でした。彼女の本はもう買わないことにします。ファンが多いのはわかりますが、私とは合わないようです・・・。
●「チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る」 大河内 直彦 ★★★★
これは秀作です。すばらしい。気候変動という一つの科学分野ができてきた工程を事細かに、そして素人でもわかるように説明したものです。気候変動と一口にいっても、それがなにをもって「実証」されてきたのか、どのような科学的(そして気候変動ではより”化”学的)な発見がいまアル・ゴア、IPCCなどの発表、グラフなどに反映されているのか、がよくわかります。
といってもこれは地球地質学と気候変動学との境目・移り変わりを描いた本、ともいえるので、気候変動そのものについて詳しく書かれているわけではなく、それよりも気候変動という存在がどのような地質学の発見をとおして実証されてきたのか、が描かれています。この分野にすこしでも興味のある人は必読と思います。すばらしい。
●「The Sion Revelation」 Lynn Picknett Clive Prince ★★★
これは「Holy Blood, Holy Grail」(邦題は:レンヌ=ル=シャトーの謎―イエスの血脈と聖杯伝説)と並んでもうひとつのダ・ビンチコードの種本の作者として有名な研究者の最新作です。この本の主題は(ダ・ビンチコードで一躍有名になった)「Priory of Sion」(シオン修道会)という秘密結社は実在するのか、というものです。始めの100ページは面白かったのですが、後半からはちょっと細かすぎる説明はかなりいただけなかったですが、結論に至るまでの推論はまぁなかなか面白かったです。
結論はというと、このシオン修道会は実在しませんし、ダビンチコードで描かれたイエス・キリストの血統、という話もでたらめ、というものです。でもミッテラン大統領時代には顕著なシオン修道会を表の顔として使っていた秘密結社の哲学、活動がEU統合の礎となった可能性が非常に高い、とのことです。興味のある人はどうぞ。
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