読んだ洋書の棚

Taka's bookshelf: read


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Blink

● 「Blink: The Power of Thinking Without Thinking」 Malcolm Gladwell  ★★ (オーディオブック)
前に読んだTipping Point(一冊目)、Outliers(最新作)の著者、グラッドウェル氏の二冊目の作品です。彼の作品はとにかく視点が面白いですね。今回のもいかにBlink、つまり「ぱっと見」を通して手に入れられる情報が大事で力があるのか、に注目した作品です。

彼の作品のもう一つの特徴としては、本の各章を積み上げて'一つの明確な結論を導く'、という形にはなっておらず、それぞれの章において主題を'取り囲む'('導く'ではなく)トピックが書かれていることでしょうか。自身の評価の星は二つですが、これは彼の3つの作品を比べれば、ということですかね。一番面白いのはOutliers、そして次点でTipping Point、そしてこのBlinkとなります。

Outliersの主題が自分のおかれた境遇(時代、肉体・遺伝、場所などなど)がいかに個である自分に大きな影響を及ぼしているのかであったように、このBlinkの主題は個々人が抱く「ぱっと見」判断の奥には実は非常に合理的、そしてときとして一方的な判断があるのか、というものであります。

彼が引き出していた「ぱっと見」・「直感判断」の事例は:
・夫婦の離婚率を二人の(ほんとの短時間の)会話から判断できること
・「黒人」に対する'差別'からくる警官の射撃事件にある「ぱっと見」判断の難しさ
・マーケティング調査では絶対に成功するはずの音楽やソフトドリンク(コーラの例)の失敗例
・ゲティー美術館が科学的な調査を尽くして'本物'と判断したクーロス(古代ギリシャで作られた青年裸体像)の失敗例
・消防士の直感の行動が実は合理的な情報の積み重ねであった件
・自閉症の'心を読めない'症状とそこから学べる「ぱっと見」解析の更なる解釈

などなどです。繰り返しますが、彼の作品の特徴は各章を仮説への強引な立証にはつかっていないことで、この本から来る結論はしかし(月並みですが)「ぱっと見からくる直感・判断は時として合理的な判断よりも格段にまさっているが、その扱いには最新の注意が必要である」という感じでしょうか。

iPhoneでの名刺撮影

iPhoneはカメラの性能が悪いので名刺撮影をしても文字がぼける、と考えてましたが、どうやらそうではないようです。
→ http://mitaimon.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/clarifi-griffin.html
このGRIFFINのClarifiという製品ですが、名刺撮影は要はiPhoneにマクロ用のレンズ(まぁちゃちい虫眼鏡のようなもの)をつければ可能なようで、名刺撮影ができればこれまたものすごく便利になりますねぇ・・・。

iPhone3Gs

iPhoneの最新機種がでるようですね。3Gsという名前らしいです。http://www.apple.com/jp/iphone/iphone-3g-s/ 3メガのカメラというのは非常に魅力的です。現行の3Gでは名刺を写真でとっても文字が判別できないような代物なので、これはよさそう・・・。

・・・が、正直これ以外、あまりすげーと感じる新機能がないかんじですね。3Gsの新しい機能として紹介されているものの半分くらいはiPhoneの新しいOS(バージョン3.0) http://www.apple.com/jp/iphone/softwareupdate/ で更新されている機能なのでこの新しいiPhone、あまり魅力がなかったりします。

個人的には新しいOSでの:カット&ペースト、横向きキーボード、インターネットテザリング(iPhoneをモデム代わりに使える)、そしてステレオBluetoothに期待してます。ステレオBluetoothがあればBluetooth対応のイヤフォンだけで、受信機をつけなくても使えるようになるのでどんな感じが試してみたいですね。

でもiPhoneのすごいところはOSが更新されるだけでまるでまったくの新しい携帯を買ったようになることでしょうかね。今までのハードの部分(ボタンとか)まで全部OSの一部となってるのでOSを更新すれば、いくら古いiPhoneを使っていようと(ハード面以外は)すべて新しくなります。これからもどんどんと進化していくんだろうなぁとホントに感心するデバイスです・・・(って高かったけど)。

Ascent of Money

● 「Ascent of Money(オーディオブック) Niall Ferguson ★ 
ハーバードの財政歴史学(という分野があるのか知りませんが)の先生が書いたお金の歴史の本です。お金・財政に基本的に非常に疎い私でして、なんか初心者にもわかりやすく説いてる本はないものか、とおもって購入した次第です。そして大正解。非常に楽しく聞くことが出来ました。秀逸です。多分でも財政にすこしでも詳しい人には退屈+バイアスがかかった語り口、となるのでしょけども、私のような財政・金融初心者には非常に刺激的で始めから終わりまで勉強になりっぱなしでした。利子、紙幣の誕生、お金の貸し借り、保険、国債、株・・・などなどがどのようにして生まれ、どのようなことを可能にし、そして世界を動かしてきたのか、ということが書かれています。ちょっと思い出すだけでも:

・アラビア数字をもとに会計計算の基礎をつくったフィボナッチ
・外国為替取引における手数料、利ざやを通したビジネスを作り出したメディチ家の成功
・戦争の続く諸国の軍資金獲得という目的に使われ始めた国債
・ラテンアメリカからの金の搾取によってインフレを起こし何度も破産に陥ったスペイン王室
・イギリスのギャンブル好きが国をわたりフランスにおいて紙幣制度を確立し、そしてフランス革命の混沌へと導いたこと
・統計学の確立とデータの収集状況の改良からスコットランドで始まった保険のビジネス
・遠隔地での事業や貿易を可能にしたリスクヘッジの方法
・オランダで東インド会社がその魁となって始まった合資株式会社制度
・土地所有の意義と土地神話、そして貴族の勃興・没落

・ヘッジファンドの歴史
・住宅ローンの始まりと失敗
・サブプライムローンの意味、失敗について
・2008年の経済恐慌について

などなど、日頃気になっていた金融とお金の
トピックが所狭しと紹介されています。単なるギャンブル、実在しないお金、欲のみで占有された業界、と、個人的にあまりいいイメージのなかった金融の世界ですが、この本を読んで、3割くらいはああ、そういう重要な役割も背負っていたのか、と思わせる部分がありました(でもまだ7割は虚の世界と思ってますが)。

サブプライムローンについてはそのほぼすべての客層が黒人などの貧困マイノリティであること、そして担保も収入もなにもなくても住宅ローンが組めるという無理のある金融商品であったことが書かれており、それを可能にした一部の理由として(輸出に有利なように自国の通貨をドルに比べて出来る限り弱くしておくために)中国からの大量のドル・国債買いによってアメリカに流入した資本が背景にあった、とあり、ここまでつながってるのか、と非常に新鮮でした。

ということで結構分厚くてトピックも多く、どこまでしっかりと頭に植え込めたかちょっと疑問ですが、読んでるときはほーなるほど!が非常に多かった本でありました。お勧めです。

GM破綻

ついにビッグスリーの2つが破綻となりました。CNNとかではこの破綻は:(1)サブプライムローンとそれを発端とした金融危機、(2)広げすぎた製品・ブランディング、そして(3)'遺産'とばれるGMの引退した元社員の社会保障・医療費(たとえばトヨタではまだ700人のリタイヤ組みしかいないが、GMではすでに40万人いるそう)、の3つを理由にあげていました。

が、自身全然車産業に関してまったく知識がありませんが、前に読んだフリードマンのHot, Flat and Crowded(「グリーン革命」)で言及されていたブッシュ大統領の省エネ・再生可能エネルギーに対するあまりの無策が大きなもう一つの原因になっているのではと思いました。

ここまでアメリカ国内の車市場が大きいと、政府からの"アメ"に企業は敏感に察知し、どんどんと怠慢になっていき、省エネ・再生可能エネルギーへのなんの現実味のある投資もないままひたすら安全性の低いSUV(トラックとみなされるために燃費基準などで優遇=あぐらをかける)を売り続ける、という企業の怠慢を呼び、非常にまちがったシグナルを与え続けていたのは事実だと思います。

もちろんすべてを彼のせいにするわけではありませんが、ホントにでも一人という人間がこの70億ちかい世界にここまで(まぁほとんどが悪い性質のものでしょうけども)影響をあたえることができるのはまた逆にアメリカのまだいまのうちは持ち続けている経済・市場・外交・金融の影響力の証左であるようにおもいますが・・・。まぁほんとのところはどうなんでしょうかね・・・。