はい。わけのわからない中川大臣エントリーからはや二ヵ月半がたちました。まったく更新できてませんでしたね・・・。この間バンコクでは皆さんも見聞きされたと思いますが、タクシン派の暴動が起こり、ちょうどまたそのときがチェンライからの帰りの日だったので夜に戦車(間近ではじめてみましたわ)や機関銃をもった兵士(これはでもまだ現在も残ってますが)がうようよといる中をタクシーを2台乗りついでAPTに帰ってきました。同じAPTコンプレックスに住んでいる同僚からは電話で今まさに外で拳銃で打ち合ってる、とかかなり非現実的なコメントを繰り返していた(といってもほんとだったのですが)のでちょっと心配しましたが、なんとか僕が帰る頃には暴動は収まっていたようです。まぁよかったです。でもいろんなタイ国内で発禁処分となっている記事(これとかこれとか)を読んでると、まったくもって今日明日で解決するはずのない根っこがかなり深い問題だと部外者ながらにも感じますね・・・。
で、いつもどおりにあまり書くネタがありませんが、最近またオーディオブックを購入しだしてきています。これはちょとしたハードウェアの理由があるのですが、というのも使っているiPhone、これはこれでほんとにすばらしいガジェットなのですが、まだBluetoothで変なぽっちを装着しなくては音楽がまだ聴けなく、そしてStop/Pauseのためにいちいち本体を出してしなくてはいけないためにかなりめんどくさいなと感じておりました。でも2ヶ月ほど前にiPhone用のShureのマイクを購入して使ってみた(個人的にShureのSE310を使用してます)のですが、ボタン一個でiPodの呼び出し、再生ができるために本体はずっとポケットに入れたままでの操作が可能になったことで非常に音楽が、そしてオーディオブックが聞きやすい環境になったことが原因です。
そしていつものAudible.comにて買い物を進めてきてます。定価が40ドルほどでも月々の購読をしていれば一冊10ドルほどですむのでかなりお買い得です。もちろんアメリカにいたときのように中古のオーディオCDをアマゾンから購入してMP3に落として直後に売るという作業では一冊それこそ2,3ドルで読めるのでそれを多用してたのですが、アメリカから離れてからの今はこのAudibleが最安値の選択肢となりますね。
ということでんでまた改めてオーディオブックの便利さに感嘆しております。APTを出て職場に着くまでが片道30分で、往復で1時間、本を「読め」ます。再生スピードも変えられますので、比較的長編でも結構1週間強で読める感じですかね。なので最近重宝しております。この2ヶ月くらいで「読んだ」オーディオブックは:
● 「Outliers」 Malcolm Gladwell ★★★
結構面白い。いかに天才、成功者といわれる人物でも、その周りの環境、つまり時間、歴史、地理、文化や生来の要素などが非常に大きな影響を与えているのである、という骨子のノンフィクション。ああなるほどねぇ、と思わせるところが多かったです。
作者は(いろんな外的環境要素がほんとに成功に与える影響が強いために)なので成功といっても実は自分がコントロールできない部分がほんとに多いですよ、世界はそこまで努力=成功となんてならないのですよ、というような結論の持っていき方だったのですが、個人的なこの本のとり方は、「個人の差はあまりなく、成功というのはほんとに誰にも可能性がある」という、作者の意向とは逆の、非常に心強い印象を持ちました。
これもまたちょっと引き寄せの法則、っぽいですが、要は自分のいる状況をプラスだと真に受け止めてそれに呼応して実行しつづける、というある種の「消極性」(自分ではコントロールできないさまざまなことがある、とする絶対認識)、そして「積極性」(それらの内外的状況を是とし、その現象の是非、善悪の余地を残すのではなく、常に「今」から将来のベクトルに向かって価値を見出していく)のミックスで人は生きていくものだ、という自己啓発によくある教えに帰結するように感じました。ああ、みんなやっぱり一緒なんだ、そしてだからこそ自分単体で森羅万象をポジティブに定義し、それを是として前に向いていく、という生き方が大事だと再確認した次第。
● 「Zahir」 Paulo Coelho ★
うちの同僚から薦められて「読ん」だのですが・・・、なんじゃこりゃ。アルケミストは私のトップリストに入るのですが、これはちょっと・・・。その同僚が一度離婚を経験しているので彼には響くものが結構あったのでしょうが、私にはまったく響きませんでした。ストーリー設定もまぁいいたいことはわかるのですが、勝手に何も言わずに二年前に失踪した妻が「実はアナタを愛していた・待っていた」と言われてもまったく自分にはピンときませんでした・・・。アルケミスト以外の彼の作品はこういう似たようなものなのかもしれないとふと感じた次第・・・。
● 「Freakonomics」 Steven D. Levitt & Stephen J. Dubner ★★
卒業生の端くれとして、当時何回か授業を受けたLevitt氏のベストセラー。この本の名前は聞いていましたが、まさかかなり身近にいた人だとは思っても見ませんでした。読みましたが、これでも経済学かい?というのが私の印象。これはどちらかというと社会科学・統計学的なような気がします。まぁそういうくだらない線引きには彼もまったく興味はないでしょうが・・・。相撲の「八百長」「出来レース」の話はしかし、1チャプター全部使わなくても直感的に当然だろうとは思うのですが、まぁそこらへんは科学者、ということであくまで数字でそれを証明しようとしています。でもなんといっても視点がユニークなのでまぁまぁおもろいです。
● 「Hot, Flat and Crowded」 Thomas L. Friedman ★★
「オリーブの木とレクサス」、「フラット化する世界」でおなじみのフリードマンの最新作。あいかわらず鼻にかかる彼独特のバイアスは健在ですが、それでも読み応えはありました。この本は450ページある長編で、これはたぶん普通に本で読んでいたら読破することはないような長さです。オーディオブックでも20時間という長さのファイルでありましたが1.5倍の速さで再生して読み終えました。
この本は要はいかにして地球における再生・省エネルギー技術の最後のフロンティア(!)、アメリカがかわっていかなくてはならないのか、ということを彼独特の世界各地からの声、出来事を載せて伝えてある力作です。この作品ではいかに現実的に、再生・省エネルギーの勃興をアメリカの大衆・政治家・企業家の間ではじめることができるのか、ということが結構詳細に書かれています。
もちろんフォーカスはアメリカ、アメリカ、ですのでそれにあまり興味のない人はかなりつまらないと思います。でも例えばいかにアメリカを始めとする国々がオイルに使っているお金がサウジの懐に入り、その金でサウジアラビアは:
(1)世界のムスリム人口の1%にも満たないにも関わらず世界の95%のイスラム原理主義の教育復興に携わっている(発展途上国、そしてODAが手を出したがらない、出さない世界の箇所で無料で教育施設を作り続けている。例えばパキスタン、そしてアフガニスタンではサウジ政府は3万4千以上の学校を建ててきており、その(とくに貧困層に与える)思想的な影響はものすごいものがある);
(2)エジプトの映画産業の90%の資本を出しており、エジプトのムスリムテーマの映画における表現への締め付けが非常にきつくなっている
などの点を指摘しています。彼のポイントはアメリカが自分で自分の首を絞めている(イスラム原理主義から連想される世界の不安定を導き出しているのは彼ら自身である)という点です。
あとこの本を読むといかにブッシュ政権のエネルギー(無)政策が昨今アメリカのビッグスリーの自動車会社の状況を引き起こす遠因となってきているのかが非常に鮮明にわかります。
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以上がこの2ヶ月で読んだオーディオブックです。オーディオブックのいいところは色々とあるのですが、
(1)移動・家事などの時間を有効に使える
(2)一定のスピードで読むので、目で読む時に比べて圧倒的に読む量が多くなる
(3)声での情報のインプットとなり、脳に直接入ってくるイメージ(個人的な見解)
(4)少々眠くて目を閉じていても十分に「読める」余裕がある
らへんでしょうか。目で読むといつのまにか文字の表面を読んでいるような気になる(集中力がさがる)ときがあり、また読み直すとか、またそうならなくても読むスピードが一挙に遅くなったりしますが、(2)のおかげでそれはなくなります。またこれは個人的ですが、耳で聞いたほうがなんか直接脳に入っていく気が個人的にはしています。あと(1)で家事とか移動とかの時間にしこしこと本を読み進んでいけるわけでまさに一石二鳥、というものですかね。