物乞う仏陀 ★4
以前読んで気に入った石井光太氏のデビュー作です。かなり有名なので読まれた方も多いのではないでしょうか。絶対貧困の時もそうでしたが、一般的に「可哀想」と思われている状況にいる人々の生活に自身がはいり、彼の視点で(ちょっと筆が走りすぎている部分はないことはないのですが)第三者の目ではなく、当事者により近い第二者の視点から見ているところが非常に新鮮で、より考えさせられます。でもアジア各国を行っている著者ですので、基本的に現地の言葉は解さず、簡単な英語を解する仲介人を経た情報がそのほとんどでしょうし、それを考えるとすこしメロドラマ化された描かれ方がされているのでは、と感じるところは多々ありました。でもそれを差し引いても面白い。お金持ち国家の住民が、いかに罪悪感を感じなければならないかという原罪的、ドグマ的な基本スタンスがないのでそれも非常に新鮮です。おすすめ。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら ★3
日本に一時帰国していたときになんか人気ということで手に取った本。うん、面白い書き方、試み、という感想。ドラッカーの本は読んだことがないので一度彼の本も(長いので)じっくりと読む日がくるのか?と感じた次第。まぁ軽い本。
A Problem from Hell ★2
以前に紹介した、かなりヒットだったChasing the Flameの著者のSamantha Powerのデビュー作?ですが、これは残念でした。いかにアメリカが世界における「大量虐殺」を横目に見、介入出来る政治力そして軍事力がありながらも(最終的に)我関せずの政策決定をしてきたのか、ということが滔々と書かれた作品。始めからあまりの著者の「全宇宙アメリカ中心主義」の思想が臭いくらいに表に出されており、自国に直接的に関係ないことに対して、政治的、財政的、国の安全保障に甚大なリスクを負ってまで介入する国が一般論的に非常に希有であるという初歩的な事実が完全に無視されてて書かれています。にも関わらず、その「大量虐殺」に対して(そのような国の絶対的性質を超えたレベルで)アメリカという世界に置けるスーパーパワー、「世界の警察」が稼働されるべきだ、という彼女の論にはちょっと(昨今のアメリカの軍事以外の弱まりを鑑みると)古くさささえ覚えました。でもちょっとChasing the Flameの印象が強すぎたのが原因かもしれません。
The Shark and the Goldfish: Positive Ways to Thrive During Waves of Change ★2
自己啓発本。引き寄せの法則等等、いろいろと読んで来てますが、彼の本はどうもまだまだ「敵」「悪」という存在を全面的に自分から切り離してその存在を認めているためにその悪をこてんぱんにやっつける、ようなアメリカンヒーロー的な雰囲気がかなり出されていました。一瞬の心のブーストアップを得るにはいいのでしょうが、つまるところこのような「敵」も、「コントロール出来ない悲劇」も「悪」もすべては自分の内部の投影にすぎず、「内」も「外」もつまるところ存在せず、その二つを行き来する流れそのものが自分である、という論を展開していません。・・・が、「自分とそれ以外の対立」という構図から始まっているので非常に力強いフレーズ、言い回しが多く、それは良かったと思います。
Africa Rising ★4
これはさくさく読めて面白いです。いかにアフリカ大陸がこれからのビジネスのキーとなって行くのか、どのような潜在性がアフリカの市場にあるのか、ということが沢山のケース、企業の紹介とともに描かれています。アフリカと言えば難民、紛争、虐殺、貧困、エイズ、ダイヤや石油、負の遺産などなど・・・そのすべてがマイナスのイメージが闊歩していますが、この本はそうした面ではなく、アフリカの明るいところ、エネルギッシュな部分をふんだんに紹介した本です。ただ一つ残念なところはそれぞれの個々の企業、マーケティングのケースは面白いのですが、それが全体からみてどうなのか、というマクロ的な分析がまったくなかったのはちょっと残念でした。とある企業はものすごく成功している、というだけではなく、この企業のこの成功はこの国に置いて何%のGDPの成長に寄与している、とか、実際にこの企業のビジネスモデルを適応してここまでの経済効果をアフリカ全体で引き起こしている、という像が提供されてませんでしたので、また彼の次回作に期待します。
Carbon War ★4
これは結構読み応えがありました。何十年も石油産業に関わって来た鉱物・地質学者の著者が転職先に選んだのがGreenpeaceで、この本は今まで石油産業のど真ん中にいた著者がどのようにして気候変動・地球温暖化という、その当時では国際的にもまったく重要ではなかったトピックをどのようにして国際的な動きにしていったのか、そしてオイル産業のロビイストグループとの駆け引きなどが克明に描かれています。2001年のペーパーバックなのでかなり古い時期の話となりますが、気候変動というトピックの国際的なうねりがまさに出てきた頃の話なので非常に面白いです。この分野に興味のある人はおすすめ。
The Energy Bus ★2
上記のGoldfish and Sharkの著者のもう一冊。うーん、力は入る内容、書き方なので(繰り返しますが)心のブーストアップ、勢いが必要な人にはいいと思います。
稀少資源のポリティクス—タイ農村にみる開発と環境のはざま ★5
日本のアカデミアという世界をあまりに知らなさすぎるのでなんとも言えないのですが、この著者の佐藤仁という人ほどに研ぎすまされた、常人では考えられないようなものすごいフレームでものを見られる日本人学者は初めてお目にかかりました。常人では見過ごしてしまうようなことを考え通し、見事なフレームを取り出し、それをフィールドレベルでデータを集め立証して行き、このフレームの有用性を立証して行く、ということをタイに置ける保護公園を取り巻くアクターを題材に進められた本です。
彼の本を読んでいると、本当に、本当に考え込んで書いている文章、ということがずっしりと感じられます。考え抜かれた一文一文が本当にちりばめられた一冊です。これが彼の博士論文がベースになっているということもまた彼の怪物さが実感出来る事実でもあります。ストイックにひたすら自分を見つめて追いつめているイチローのような印象を彼の本を読んで感じました。いや、彼はすごい。
グーグル革命の衝撃 ★1
NHKスペシャルの本ということで買いましたが、駄作。たんなる取材のまとめ。グーグルについての本当のすごさの分析は梅田望夫氏の「ウェブ進化論」の方が論をまたずにお勧め。(梅田氏の本はちょっと以前のブログで言及してます。こことここです)。
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