● 「Ascent of Money」(オーディオブック) Niall Ferguson ★★★★
ハーバードの財政歴史学(という分野があるのか知りませんが)の先生が書いたお金の歴史の本です。お金・財政に基本的に非常に疎い私でして、なんか初心者にもわかりやすく説いてる本はないものか、とおもって購入した次第です。そして大正解。非常に楽しく聞くことが出来ました。秀逸です。多分でも財政にすこしでも詳しい人には退屈+バイアスがかかった語り口、となるのでしょけども、私のような財政・金融初心者には非常に刺激的で始めから終わりまで勉強になりっぱなしでした。利子、紙幣の誕生、お金の貸し借り、保険、国債、株・・・などなどがどのようにして生まれ、どのようなことを可能にし、そして世界を動かしてきたのか、ということが書かれています。ちょっと思い出すだけでも:
・アラビア数字をもとに会計計算の基礎をつくったフィボナッチ
・外国為替取引における手数料、利ざやを通したビジネスを作り出したメディチ家の成功
・戦争の続く諸国の軍資金獲得という目的に使われ始めた国債
・ラテンアメリカからの金の搾取によってインフレを起こし何度も破産に陥ったスペイン王室
・イギリスのギャンブル好きが国をわたりフランスにおいて紙幣制度を確立し、そしてフランス革命の混沌へと導いたこと
・統計学の確立とデータの収集状況の改良からスコットランドで始まった保険のビジネス
・遠隔地での事業や貿易を可能にしたリスクヘッジの方法
・オランダで東インド会社がその魁となって始まった合資株式会社制度
・土地所有の意義と土地神話、そして貴族の勃興・没落
・ヘッジファンドの歴史
・住宅ローンの始まりと失敗
・サブプライムローンの意味、失敗について
・2008年の経済恐慌について
などなど、日頃気になっていた金融とお金のトピックが所狭しと紹介されています。単なるギャンブル、実在しないお金、欲のみで占有された業界、と、個人的にあまりいいイメージのなかった金融の世界ですが、この本を読んで、3割くらいはああ、そういう重要な役割も背負っていたのか、と思わせる部分がありました(でもまだ7割は虚の世界と思ってますが)。
サブプライムローンについてはそのほぼすべての客層が黒人などの貧困マイノリティであること、そして担保も収入もなにもなくても住宅ローンが組めるという無理のある金融商品であったことが書かれており、それを可能にした一部の理由として(輸出に有利なように自国の通貨をドルに比べて出来る限り弱くしておくために)中国からの大量のドル・国債買いによってアメリカに流入した資本が背景にあった、とあり、ここまでつながってるのか、と非常に新鮮でした。
ということで結構分厚くてトピックも多く、どこまでしっかりと頭に植え込めたかちょっと疑問ですが、読んでるときはほーなるほど!が非常に多かった本でありました。お勧めです。
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